投稿日:2008-01-24 Thu
良く晴れた風のない夏の日。住宅街にある公園の日溜まり。
幼児服を着た1,2才ぐらいの子供を連れた若い男女がいた。
子供はようやく1,2歩歩けるようになったらしく、
ふらふらと立っているのか歩いているのか、よろけているのかも分からない足取りで、
それでも、生きていることが何よりの喜びであると言いたげに、屈託なく笑っていた。
その隣りで母親も笑い、そして父親もまた誇らしげに笑う。
ちいさな腕をぶんぶん振りながら、幼児はなお満面の笑みを放つ。
家族にとって最高に幸せなひとときだ。
その幼児の足の下…
彼女の柔らかな足の下には、
踏みにじられて、今正に仲間の前で息を引き取らんとする蟻がいた。
食料を運んでいる最中の事だった。
この役目に選ばれて、まだ3日と経っていない。
瀕死の重傷をおいながらも、
大切な食料を最後まで巣へ運ぼうと、
彼は懸命に起き上がろうと試みる。
仲間はそれを手伝おうとするが、
いよいよもう見込みのないことを知り、
再び自分たちの仕事へ戻ろうとしたその時、
皆の耳に巨大な虫の羽音が届いた。
ぶーーーーーん……
空を見上げると、光る大きな虫。
虫の腹が皆の目にもよく見えた。
その光る虫が卵を生み落とす。
辺りは一瞬にして閃光に包まれてゆく。
そして世界は一変。
血と火と苦しみと恐怖の狂瀾
灰になったものの側で、
泣く間もなく、
命が死と背中合わせになってゆく。
泣き叫ぶ老若男女。
犬も猫も人も何もかもが水を求めて、
助けを求めている。
空の彼方、雲に隠れて
虫は、今も音を立てながら跳び続けている。


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