投稿日:2008-01-26 Sat
ライブを見た後外に出ると、辺りは真っ暗で空気が冷たかった。
騒ぎながら帰ってゆく人を見ても、
私は帰りたくない……。
泊まり歩くのも、頻繁すぎると嫌われるし、
出待ちを装って、時間を潰しても
嫌いじゃないって程度のバンドと友人。
だからここも居場所じゃない。
新宿〜×××間、深夜バス
通りがかりに、乗ってみる。
静かで、無関係で、となりの親父は酒臭い。
"帰る"のじゃなく、"行く"ということに、
少しだけ悦に入った。
バスが高速に乗った。
規則正しく街灯の過ぎてゆくほどに
皆の寝息がシンクロしてゆくが、
私は横目で街灯を流していく。
ipodで聞いているいつもの曲が、
思い出になるような予感がした。
涙が出てきた。
私は悲しくない。
悩んでなんかいない。
なら、なんだって涙は出てくるんだろう…。
誰かに頭を無性に撫でて貰いたい。
でも私は独り。
深夜バスになんか乗っていたら、
誰かにぎゅっとして貰いたくても、相手はいない。
だから代わりに、
私は携帯をぎゅっと握りしめる。
私が悲しいのは、
きっと私も含めた誰もが、私の悲しみに気づけないからだ。
この先どうしよう、
次の街に着く前に夢を叶えなきゃ、ダメになっちゃうよ。
死んじゃうよ……。
バスの常客は皆、白狐。
親父や若い男も、みんな白狐。
白狐が皆こちらを見ている。
夜景を映す黒い窓ガラスに、私は食事をしている自分を映した。
べったり口紅を塗った口を大きく開けて、
際どく甘い、ドーナツを頬張る。
次から次へと囓ってゆくと、
ドーナツのくずが散乱して、唇の端には生クリームがついてしまった。
もう直次の街に着いちゃう、
次の街に着く前に夢を叶えなきゃ、ダメになっちゃうよ。
死んじゃうよ……。
……夢?
夢なんてあったっけ?
あれは夢ではなくて、捨てたもの。
粗大ゴミ?分別ゴミ?
何曜日に出すんだっけ、それともお金取られるのかな。
もうじき街に着くよ。
夢はどうするの?
捨てるの?
持ったままでいくの?
コチラを見ていた白狐が
皆吹いて、横を向く。
私、笑われてるんだ……。
悲しくなった。
誰かハンカチを頂戴。
でも誰もいないから、
携帯を持った手の甲で拭う。
"もう直だね" "もう直だね"
"もう直だね" "もう直だね"
狐の盆踊り、もう直だね……。
目を合わすな、ベロを出せ、
唾を吐きかけろ、
弱みを見せるな!
夢…あったっけ、そんなの。
しーっ!
狐に聞かせるな!
しーーーっ……
次の駅で、
私はもしかすると狐になるかも知れない。
ならないかも知れない……。


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