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文化祭 12
「佐藤だ、行くぞ田中」
イタチ本君は勇んで歩き出したけれど、
僕は井本入りの剥製を持っているから、みんなに見つからないようにするのに気が気じゃない。
T字路になっている廊下の突き当たり、準備室へと佐藤が入って行く。
それを追いかけるようにしてイタチ本君が走り出して、僕はそのまた後を追おうとして慌てて……。
「  」(あ………!)

イタチ本君が振り返って僕の異変に気づき駆け寄ってくる。
僕はその姿をとっても不自然な角度で眺めている。
(あれ?)
「大丈夫か、田中」
「うん、平気…」
平気は平気なんだけど、やっぱり僕の声が何だか変。
「……」
一瞬剥製の方を見たイタチ本君は、またもや向き直って僕の体を揺さぶる。
「おい、田中っ…しっかりしろ田中っ…」
慌てているイタチ本君が、何だかとっても可愛い。
「だから大丈夫だよ。僕こっち。えへへ」
「……」
そうなのだ、僕はどうやらイタチの剥製に入ってしまったようだ。
そして僕の体の方は動いていない。
大丈夫かなぁ…。
「じゃあ、井本は?」
「まだここにいるよ」
「……」
「中どうなってんだ?」
「そんなのお前が一番知ってるだろう」
「……」
「あのぅ…それより、そこで横になっている僕の体を何とかして欲しいんだけど」
「……」
「僕って生きてる? それとも死んでるの?」
「おいおい、勘弁しろよ」
真剣な顔でイタチ本君が脈を取る。それから耳を僕の鼻の方に近づけた。
「ん、眠っているか…気を失っている状態?」
「とにかくこのままはヤバイよ、取り敢えず寝不足で貧血を起こしたって言って保健室連れて行け」とは、剥製の中の井本。
「そうだね、このままは嫌だな」

僕の体を保健室に届けると、いよいよイタチ本君は1人で、僕らの入った剥製を抱え佐藤とご対面するのだった。
否、対決?
準備室の扉をガラッと開け、イタチ本君の第一声。
「佐藤っ」
思いっきりの呼び捨てに慌てて僕が
「……せんせぃ…」
と声音を変えて、付け加えた。
すると、佐藤先生はひょっこり棚の横から顔をだけ出して、
「おぅ井本か。さっきはサンキューな、助かったよ。まあこっちに座って珈琲でも飲……」
あ、佐藤先生、僕らの入った剥製に気が付いた。




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文化祭 | 01:15:20 | Trackback(0) | Comments(6)