投稿日:2008-02-15 Fri
僕は兎の縫いぐるみの頭部を膝に、ほおづえを付きながら
後夜祭のことを考えた。
カップルが出来るとの噂に、女子が盛り上がっている後夜祭。
(今日告ると絶対結ばれるって…一点集中したらどうなるんだよ。
みんな結ばれて何角関係になるんだよ……)
なんて自分とは無関係なことを考えてみた。
戸がいきなりガラッと音をたてて開いた。
僕は兎のように飛び上がりそうになった。
「もぉー…おどかすなよ…」
「何、ビビッたの?だっせー…」
井本は僕をからかいながら、手に持っていた缶ジュースを
ひとつ分けてくれる。
「これ、担任から」
「へぇー太っ腹じゃん」
「お、鈴木たちだ」
井本は窓から校庭を見下ろしていて、手を振っている。
僕も立ち上がって窓の外を覗くと、
グランドの真ん中辺りで、
隣のクラスの女子数名が、こちらに向かって手を振っている。
「井本くん、かわいいー」
女子が声を揃えた。
井本はクマを被ったままだ。
だけど、これが僕だけだったら、
兎を被っていたとしても。「かわいいー」とは言われなかっただろうと思う。
それ以前に兎が誰かなんて、女子には興味もないだろう。
井本は普段から女子に人気があるのだ。
同い年で、背格好だって大差なく、
それほど顔が良い訳でもないのに、よくモテル。
「あとで3−C来てねぇー!」
懐っこく、ちゃっかり宣伝をすると
井本はしゃがみ込んで、壁にもたれた。
「俺ちょっと昼寝する…なんかえらく疲れちゃってさ」
「ああ判る、疲れたよなぁ…」
「なあ、15分ぐらいしたら起こしてくんない?」
「いいよ」
井本は明るいと寝られないからと言って、
縫いぐるみを被ったまま眠ってしまった。


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